石井うどん店@新座市(武蔵野うどん)
まだこれからが冬本番のある日、私は彷徨っていた。
例によってうどん屋を探訪すべく家を出たのだが、目当てにしていたうどん屋が休みだったのだ。
かなり年の瀬だったので、こういったこともあるだろう事は十分想定していたのだが、その後を全く考えていなかった。
しかし、うどんを食べに出かけたものだから、すっかりうどんを食べたくて仕方が無くなっていた。が、当てはない。
そして私はうどんを求めて彷徨っていた。
東村山から東へ、清瀬・新座・東久留米辺りを何の当てもなく車を進めた。
当てはないが、この辺りは武蔵野うどんの東の中心地である。ばったりうどん屋に出くわしたりするだろう、などといつもの行き当たりばったりな気持ちで見知らぬ道を進む。
そのうち、うどん屋どころか、どんな店も有りはしないと思える、入り組んだ住宅地の狭い道に迷い込んだ。
さすがにもううどんは諦めるかと思い始めた頃、曲がりくねった道の先にうどん屋が唐突に現れた。
作りは農家風の佇まい、今はともかくかつては農家だったのかもしれない。
とにかく、この辺り(新座の端っこ)に武蔵野の畑が広がっていた頃から、ずっとそこにそうしてあっただろうと思われる建家であった。
庭先のような駐車場に車を止め、店に入る。
とても古めかしく、タイムスリップした感がある。
場所柄、武蔵野うどんのメニューを期待するが、肉汁うどんのようなメニューは見あたらない。
かろうじてメニューの端っこにあった、もりうどんを初老の主人に注文する。
店内は時間が止まっているかのよう。
静かにうどんを待つ。
そしてしばらくののち、うどんが運ばれる。
とくに変哲のないもりうどんだ。
せいろではなく、皿に盛られているところはさすがに東京の蕎麦屋系のもりうどんとは違う。
薬味の刻みネギと共にほうれん草が添えられているところも武蔵野風だ。
しかし、なんと言っても付け汁である。
冷たいそばつゆではなく、温かい付け汁であった。
さて、うどんであるが、色は白色系(とはいっても会計の時に厨房を見、そこに田中製粉の星印の小麦粉の袋があった。間違いなく武蔵野地粉のうどんである)、そして、もそもそした食感である。
こうした食感のうどんは武蔵野のうどんには多い(「ますや」とか「よし」とかそうかな?)。今現在のうどんの一般的嗜好性を考えると、食感的にはウケるものではないとは思う。
が、こんなうどんこそまさに武蔵野のうどんという感じだ。
それにしても、あまりにもひっそりとこのうどん屋は佇まっていた。
あるいは自分は白昼夢を見ていたのかもしれない。
古き良き農村地帯であった過去の武蔵野の記憶に、いっとき引きずり込まれていたのかもしれない。
石井うどん店
埼玉県新座市栗原1-14-47
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Comment
いやー知りませんでした。まだまだこんなふうな店がひっそりあるんでしょうね。
私も訪問してみたいと思います。地番は新座市新座1-14という了解でいいですかね。
すっかり武蔵野うどん=肉汁うどんということになっていますけれど、私もそもそもはこんなふうな形態が、このへん一帯のうどんのスタイルだったと思います。
やゃっ、ぐーたりさんどもどもです。
地番の件、抜けがあったので訂正しておきました。新座市栗原ですね。
この店には記事の通りまったく偶然に辿り着きました(自分には珍しいことに・・・)
味については(今の一般的なうどんの味覚に照らせば)正直それなりだとは思いますが、自分としては味云々よりもむしろ、このような地域に根ざした店に会うと嬉しくなるタチだったりして(我ながらマニアックに過ぎるような。。)
お、栗原ですか。地図を見ると大蔵屋を左に見ながら通り過ぎ、久屋を通り過ぎてその先2つめの信号を左に入ったところのようです。うーん、さんざん通りつつ、そこで左折したことはなかったですね。今度行ってみます。
でもホント、近所の人たちによって支えられている店を発見するとうれしいし、味を評価するという以前に、その雰囲気だけで楽しい気持ちになりますよね。
願わくば、このまま武蔵野うどんがブレイクなどしませんように。